非常階段/霜天
 
いつも通りの要素で朝が構成されている
人、人、赤い車、通り抜ける頭、髪の流れる、緑色の、人
見知った他人の中で何かを忘れているようで
振り返っても気付けない
ここでは、何かが足りないまま流れて

少しの風が大勢になって
人の、僕の横の空欄を選り分けていく
肩先の余白、初めて気付いた顔のまま
みんな、どこかで消えていくことができる
ちょっとそこまで、潜り込むようにして


扉を開ければ
いつもそこまでだった
懐かしい世界の夕暮れる気配がして
まっしろなビルの、部屋の隅の
堅い堅い扉を開ければ
垂直にそびえる空の下
消えていく人が、いた


毎朝の、軽い眩暈を
いつもの珈琲のせいにする
ここでも、何かが足りないまま流れて
気付いても、気付かないように、それぞれに滑り込んでいく
誰も分かっていたはずの世界の、零れる音を聞きながら

みんな、どこかで消えていくことが、できた
静かな挨拶を、軽く手を上げるようにして
   グループ"四文字熟語"
   Point(2)