郊外湿地/木立 悟
月の予感に空を見る
私の水が粉と舞う
遠くの人家の吠え声が
空の緑に波を刺す
蒼に染まった雲を追い
地平に沈む夜を見る
せめぎあう
小さな音たち
せめぎあう
現われては引き
引いては現われ
消えることなく
自分の番を待つ
導きの絵は沼の底
汚らしくあやしい本につけられた
美しい傷のように
時おり水紋の開花に光を送る
沼の水に口を寄せるのは
石油色の空気の中で
生まれ育った新たなけものたち
卵は流れる
育みやすい木板から
行為は再び
終わりなく始まる
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