白亜水唱/木立 悟
 



動かない水たまり
晴れの日 他の水たちに
追いぬかれてゆく水たまり
重い火の血の水たまり
底に焦土を抱く水たまり


光をはじく骨の手を
振りつづけている水たまり
脂の角は燃えあがり
硬さを失うその瞬に
何もかも放つ昼さがり


道は雨をかきむしり
白を残して消えてゆく
時計を洗う布の波
重なる瞳の水たまり
輪の唱を知る水たまり


雨のなかをくりかえし
雨の数え方は降ってきて
数えはじめるそのころに
雨は背を向け去ってゆく
ひとつを残し去ってゆく


空の深くにある白が
道の白を見つめている
川の波と海の波
視線を返す子らの声
はばたく声を聴いている


水は水に重なって
唱は浮かび また沈む
粗く斜めに馳せるもの
雨が風が連れ去るもの
遠くまたたく水たまり










   グループ"四文字熟語"
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