天体乱遊/塔野夏子
 
怠惰な月に塗(まみ)れて
果実のような遊星たちと
悪戯に耽ろう
どうせ軌道からはとうの昔に逸れて
だから輪郭も幾重にもぶれてぶれてぶれて
いるから

薔薇星雲を千切ってばら撒いて
そのただ中を車輪銀河に乗って
駆け抜けよう
何処かへ墜ちてゆくまで
    墜ちてゆくまで

奔放な星座たちよ
来て めまぐるしく踊って
不埒な彗星よ
来て わたしを攪拌して

だってどうせ軌道からはとうの昔に逸れて
だから輪郭も幾重にもぶれてぶれてぶれて
いるから

それでもわたしの芯にある虚空は
くっきりとゆらがないのは何故
静かに澄んだまま
何もはじまらず
何も終わらない

きっと
わたし自ら 其処へ墜ちてゆくまで
         墜ちてゆくまで

だけど今はただ
何処へでも漂い
遊びつづけよう
ただ太陽にだけは
決してめぐり逢わないように






   グループ"四文字熟語"
   Point(10)