仮想記憶/霜天
振り分ける少女の、
想
名前もない
痛む、芯も
未完成な少女の主題は
誰にも知られない、それだけの行く末
本を開けば文字に溺れた
さかなに、なりたかった
揺らぎ揺らすからだの線
空に息を止めて
飛び方ならいくつも知っているのに
人いきれの届かない屋上の空
目蓋一杯に、なれる顎のその角度
きっと一番綺麗だから
駆け抜ける少女の、
想
名前もない
きっとこれからも、いつか
すべてに手のひらを合わせて
次は何を見よう
その足跡で
昼過ぎて、空寝
いつもよりも広く臨んで
振り分ける少女の、
変わらない右足の傾き
それは戸棚に仕舞いこんだ
足跡の積み残し
仮定する少女の、夏
季節に、空は飛べなかった
いつだってさかなになりたかった
いつだって、なりたかった
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