回帰本線/ミゼット
羊水の記憶を辿りたくて
何度も海を呼ぶ
故郷への列車は海も山も知らない
揺れは
胎の記憶
響く音は
血の流れ
唸る、唸る、
私の海
(海にあこがれて南へ出たけれど 。)
羊水に触れたくて
海を呼ぶ
海の只中では
どれが私か分からなかった
海を捨てて走る列車の中で
何度も呼ぶ
朧の記憶を掴みたくて
足元を探る
地平も森も知らない故郷へ
土も風も知らない故郷へ
膨張を続ける町へ
私は光を架けて行く
海を呼ぶ
カーブ、
海を呼ぶ
最後の直線
海!私の海!
ホーム、そして
海!
呼ぶ、
通過点の町は星も知らない
遠く、今は海を捨ててきた
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