メッセージ(稿6/ワタナベ
 
は投げ捨てた鞄の中から、カルトンと画用紙、HBの鉛筆をとりだし、窓から見えるだけの街並み、ひとつひとつの家、ビルディングをできるだけ丁寧にデッサンし、それらの無数の窓からもれるささやかなひかりを、こまかく塗って、教室の後ろの壁に貼り付けた。
ぼくはしばらくそれを見つめて、階段を降り、靴箱の横を通り、玄関から外に出る、校門で学生服とすれ違う、振り向くと、暗闇の中で、学生服が呆然と立ちつくしている、校舎は見えない。
その足元には、一枚の画用紙がぼんやりとひかりを帯びている。
ひかりの中から、矮小なぼくのさまざまな声が聞こえてくる。
学生服は耳を塞いでうずくまり、頭のてっぺんからどんどんと画鋲になり、崩れ、画用紙の上に音をたててふりそそぎ、はねた先の暗闇に消えてゆく。
画用紙を拾う、そのあかりをたよりに、ぼくは歩き出す
あらたなもうひとつのひかりの中へ
   グループ"■ 現代詩フォーラム詩集 2007 ■"
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