黒の墓標 (18禁) ★/atsuchan69
 
出モ、全部漬ケタンダ

シリウスの伴星に冬の訪れる頃
黒い染みあとを見て、俺は泣いた
ふん、凶暴な俺のまえでは
詩人の言葉なんか痩せこけた洗濯板の、ただの裸だ!
晒を巻いた腹から飛びだした包丁の柄を握る
キラリと光る一瞬の先。
勢い、よく研いだ出刃をふり降ろして血飛沫、、
醜く老いた厚顔の詩人の首をぶった切ってやった
二度、三度、四、五、六、七‥‥
幾度も、そして幾度となく

殺した詩人の生首が冷たい風に晒され吊るされて
暫く、窓の外にぶら下がっていたけれども
病んだ心の蒼ざめた高名な生首は洟水をたらし
図太くもなお一人、意味不明の詩を朗読した

たぶん、きっといつの日か
その毛の生えた不気味な球体の輪郭すら
高度な漸層法やレトリックともども、
みごと虚空のノイズに紛れて消えてしまう筈である


そう、記憶の底で眠る君の、――あの歌が忘れられない


   グループ"■ 現代詩フォーラム詩集 2007 ■"
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