不安定性突然変異/狩心
羽が生えた
獣の人は
鋭い牙と
鋭い爪で
社会の飢えを
飛んでいく
牙から滴る唾液と
爪から滴るドス黒い血液が
夜の街を歩く不眠の人の頬に
優しく触れて誘う
堅く閉ざされた建物の中へ
月の光も届かない
影もない
未来も過去もない場所
羽がバサバサと蠢く音が
冷たい壁に何度も反射する
不眠の人の目には赤い光
闇に適応した悲しみのスコープ
その万華鏡の中に現れた獣の人が
手を差し伸べて
死別した家族の面影を装う
もしくは別れた恋人の面影
もしくは会わなくなった親友の面影
暗闇を覗き込んだ時に映るもの
それは人によって違う
しかし人は皆
差
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