記憶の断片小説・ショートシネマ 「ロイド」/虹村 凌
 
「二本目の煙草・牛込神楽のセブンスター」

僕は地下鉄大江戸線を降りて、改札を出る。
携帯に道順を示したメールが来たので、それを頼りに、彼女の家に向かう。
一度、通り過ぎてしまって、引き返してきたところで、
彼女が家のドアを開けて、待っていてくれた。

僕と大して変わらない身長、痩せた色白の体、
短めの髪の毛、眼鏡の奥の、小さな垂れ目。
小さな口で微笑む。
挨拶もそこそこに、家の中に入る。

ちなみに、今でも、あの家の一回の間取りは、何となく覚えている。
あの家は、今はもう無い筈だけどね。

どんな会話を交わしたのか、あまり覚えていない。
僕らはテレビに向かって設置
[次のページ]
   グループ"記憶の断片小説・ショートシネマ 「ロイド」"
   Point(1)