「その海から」(61〜70)/たもつ
 
な安らかな寝顔なのに
淋しさや悲しみの類の答えが
返ってくる

屋根に星屑が降り積もる
朝までには
すべて溶けるのだろう
  
 
68
 
豆腐専用のポストに
豆腐を投函する
家に帰ってから
絹ごし用の方に
木綿を入れてしまったことに気づく
誰かに謝りたくて
果物でも剥こうと思ったけれど
昨日から台所が壊れている
  
  
69
 
家の裏に都会がある
華やいだ人々のざわめきや
乗り物の動いている音がする

一度行ってみたいのに
家の裏へと続く
道が見つからない

都会のある方の壁に
窓と
窓から都会を覗く
自分の絵を描いてみる
 
 
70
 
無人のお花畑に
パラシュートを開いたベッドが
落下する
揚げたてのコロッケを
たくさん積んで
 
もし新しい子が生まれたら
白い色鉛筆を持たせてあげよう
好きなものを
好きな形で
描けるように



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