その海から(あとがき)/たもつ
 
 
 
カメラが無くなってから
鞄が手放せなくなった
窓を開けると
春の風とともに入ってくる
都市の景色
潮風のように笑うけれど
指紋はすべて失効してしまった
鞄の中を探れば手に触れるのは
柔らかい工場たちの背中だ
眠れないまま終わった睡眠の続きだ
毎日の争いにも慣れ
洋菓子店のショーケースに並ぶ
動物性何某の皆さん
スタンプカードには
希望、のハンコが押されていく
手で海の水をすくう
新たな海が生まれる
その海から始まった
この海で終わる
 
 
  グループ"詩群「その海から」"
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