白い都市/英水
 
当てる耳

響く壁が、
響いている壁が、 
あるいは、うめいている石が
あるいは、回帰している三半規管の中へ、
オゾオゾと、這いつくばりまわる繊毛上を
つまりは、うめいている石が
この壁を叩き割って、うめきを、一斉に
一斉に、ぶちまけろ、街へ
アロマプラプテ 
ああ、(トルコ人の売る)石榴に似たうめき(喘ぎ)


彼と彼女は。
桜の木下で、腐乱したかった彼女
は、やがて空から墜落した彼の腕の中へ

堕ちる
膠着した雪が、振り分ける指先の痺れ
とは。

火を付けてくれないかしら?指先に火を

髪にからみついて離れない、幾千本の肌熱や、
フタリが抱き合ったベットの、ただ、皺だけが増加してゆく 
ダム

 喉を吸ってくれないか?喉元の石を

海へ回帰する雨の音だけが増加してゆく 
ダム

 
明るいビルの底 
フタリ フタリ

彼のその冬のアトリエで
白い都市が産声をあげる


   グループ"空間計画"
   Point(5)