白い都市/英水
当てる耳
響く壁が、
響いている壁が、
あるいは、うめいている石が
あるいは、回帰している三半規管の中へ、
オゾオゾと、這いつくばりまわる繊毛上を
つまりは、うめいている石が
この壁を叩き割って、うめきを、一斉に
一斉に、ぶちまけろ、街へ
アロマプラプテ
ああ、(トルコ人の売る)石榴に似たうめき(喘ぎ)
彼と彼女は。
桜の木下で、腐乱したかった彼女
は、やがて空から墜落した彼の腕の中へ
堕ちる
膠着した雪が、振り分ける指先の痺れ
とは。
火を付けてくれないかしら?指先に火を
髪にからみついて離れない、幾千本の肌熱や、
フタリが抱き合ったベットの、ただ、皺だけが増加してゆく
ダム
喉を吸ってくれないか?喉元の石を
海へ回帰する雨の音だけが増加してゆく
ダム
明るいビルの底
フタリ フタリ
彼のその冬のアトリエで
白い都市が産声をあげる
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