考察/Tsu-Yo
 
間違っている、と叫んだ
それもまた正しいことなのだろう
誰も間違わなかった日
世界は少し
間違っているように見える


〈野原にて〉
遠い山の向こうへと繋がる
七色の虹を
その人は背負っていた
重くないですか
と尋ねると
その人はすこし微笑んでから
紺色を手渡し
故郷の虹は六色でした
と寂しそうに呟いた
空っぽでいっぱいの野原の上を
風が吹き抜けていく
有ることも、無いことも
大して変わらないのかもしれない


〈会社にて〉
同期の桜が散ったから、夏
些細な変化は時計によく似ている
受付の女の子は朝からずっと
体温計を口に咥えたまま
お客さま
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