◆ふゆの花びら/千波 一也
水晶を砕いてください船底でふゆの花びらかくまうように
捨ておいた言葉に幾度も拾われて星座のたもと鋭角を知る
閉じかけた波音の日がよみがえる月の鏡の無言を浴びて
祈らない実りは疑う余地もなくささやかな火を吐く息に見る
かじかんだ定義をひとつポケットに駆けぬけてゆけ、薄紅の暮れ
ぬくもりは列車の窓を曇らせて水のいのちの線路は続く
いつかまた、続きを忘れかけた頃、指先に降る雪の一文字
沈黙を奏でることの楽章に身を寄せている街路樹は、ただ
望んでも望まなくても枝わかれ風の重みを細々と聴く
手紙にはなくした文字が燃えている風に急げばなお煽られて
むずかしく思う隙間に粉雪は生まれてきえる安らかな船
花の名を探しあぐねて海底は研ぎ澄まされる、ふゆの訪れ
もどかしく香りに揺れて十二月、名前はいらないふゆの花びら
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