夕暮れ王国/未有花
 
夕暮れには不思議な魔力があって
どういうわけかふいに門が開かれて
僕の王国に淋しい旅人を連れて来るんだ

旅人はしばらくは荘厳な夕日に見惚れているが
我に返ると皆決まって故郷に帰りたがる
だけど王国の門が開かれるのは気紛れで
それは明日のことかもしれないし
何年かあるいは何十年先になるかわからない

いつまで待っても開かれることのない門に
最初はチャンスを窺っていた旅人も
やがて帰ることも忘れて
ここで延々と沈むことのない夕日を眺めることになるのさ

僕もいつからここにいるのか忘れてしまったよ
もしかしたらみんなと同じように
僕も向こう側から来たのかもしれないね
[次のページ]
   グループ"夕暮れ詩集"
   Point(23)