降り来る言葉 LXX/木立 悟
命の抜け殻の羽ばたく音が
息と手のひらのかがやきを見ている
朝が
径の上の夜を流す
頭の穴に降りそそぐ
夜の指の先端の星
まばゆく痛み
頬へあふれ こぼれゆく
硝子を滑り 焼け爆ぜる文字
鉄柱の重なりを舐める文字
水と光と空の交差
鳥へ鳥へ落ちる音
手に余るふしあわせを
手の下の小さな手が受けとめつづけ
受けとめきれずにこぼしつづけ
それでもふしあわせは降ることをやめない
雨を浴びた夜灯の目が
震える輪郭を見つめている
風が陽をあおぎ
光はちぎれ 水底を歩む
神鳴り 水滴
虹の針
木と布の虫
のぼる のぼる
跳躍 跳躍 一本の線
けして けして とどかぬもの
無数の星雲が落ちる器に
静かに架かる二色の梯子
建てられつづける森を見ていた
何処にも何処にも辿り着けぬ日
子らのまばたき けだものの声
空をこぼす手のひらを見ていた
次 グループ"降り来る言葉"
編 削 Point(2)