(d)/ふるる
その墓には同じ苗字を持つ男女の名が記されていたどちらもJr.でありきっと兄妹だったのだろう二人は同じ日に死んで同じ墓に入ったのだからずっと一緒に長く暮らしたのだろう、しかし奇妙なことに父親と母親の名はない。画家はしばらく立ち止まり墓を見つめていたがもはや死んだ者には用はないのだと言うようにカンバスを広げた、墓の絵を描こうと思った。赤を基調とした大きな絵を。しかし描きすすめるうちに白ばかり塗りたくっていることに気づいた。白は死者の色なので画家は好んでそれを使わないのにその白は確信を持ってカンバスに広がってゆくよく見ると鳥の形に見えなくもない。鳥は好んで描いていたものなので画家は筆に任せて鳥を描き続け
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