海辺の散歩/佐々宝砂
 
海底深く沈むというその都市を
あなたはルルイエと呼びました
それともそれは
ル・リエーだったかもしれません

その名の発音さえ定かでない都市の
おそらくひどく冷たいのであろう
石造りの歪んだ伽藍を
どうしてわたしたちは
こんなにも恋しく思うのでしょう

わたしたちは海辺を彷徨いました
都会風の若者たちがたむろする
花畑のようにウインドサーフィンの帆が並ぶ
そんな海辺ではありませんでした
文明の恩恵からとりのこされ
文明の廃棄物だけをうけとめたような
半ば死んだ漁村から続く海辺でした

砂は黒い油でべとべとしていました
そしてそのべとべとの中から
青黒く光る
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