たとえちいさな光でも/千波 一也
わが子が泣くので
わたしはそっと抱きあげる
生まれたばかりの
からだを包む
そして
なるべく平易な言葉をかけて
わが子の視線の先を見る
ときに
わが子は泣きやまないが
この世にうまれたばかりなら
不安や恐れもあるだろう
滅入りそうでも
いらだちそうでも
わたしはつとめて
揺りかごになる
やがて
寝息をたてるわが子の頬には
ちいさいながらも
涙のあとができて
かわいそうに、と
胸がいたむ
この世には
いつまで泣いても
けっして抱きあげられることのない
赤子がある
かけられる言葉もなく
腕のぬくもりもしらず
泣き
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