ガトー・ショコラ/千波 一也
かわいい皿と
小さなフォークと
まるいグラスに注がれたソーダ
ひとり暮らしの彼女の部屋には
見慣れぬ物が多すぎて
しばらくキョロキョロ
彼女はせっせと
ガトー・ショコラなるものを
切り分けていて
揺られる髪が
いい香りだ
オレはというと
オトコ臭くないだろうかと
急に
妙に
気になりだして
後ろを振り返るふりをしたり
必要以上に下を向いたりして
そっと確かめている
はい、どうぞって
彼女が切り分けたガトー・ショコラ
美味しくないかも、とか
失敗したかも、とか
言い訳がましくないから
彼女がすきだ
はい、どうぞっていう
物の
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