飴細工/千波 一也
通り雨を
息継ぎしながら
ぼくたちは急いでいた
離れることを
急いでいた
手のなかの熱は
次から次へ
一秒後
つよくなろう、と
翳(かげ)りをひそめて
約束することが
約束だけれど
はじめて、のような
二度目の夏を
語るには
はやい
まだ、はやい
ときを
奪いたくなる不躾(ぶしつけ)を
責められるような
ぼくだから
この肩には
きみが、いい
頷(うなず)いてくれるなら
愚かさを越え
かたち、は
いっそう
遠くなる
けれど
晴れ間が多いぼくたちは
いのりの行方を追ってゆく、
何度でも
土香る、つばさのいろが
うつくしい
みとめることも
わらい捨てることも
ふたりの指が
憶えゆくもの
混ざりあう呼吸のなか、の
透明な曲線
ぼくたちは
繊細に、
試されている
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