プロミネンス/千波 一也
 

鎖骨の
においが
こぼれ落ちたら、

さかなのゆめに朝がくる



ことば未満の愛を交わして、
ゆっくりとたしかめる
てあしの記憶

水の
においの
シーツを背中に
羽をひろげるまねをして




 ふたり、
 月を宿している

 鍵穴とも呼べそうなそれは
 ひみつ、ではないから
 ほどよく闇を
 ひかって
 みせる


 真夏の午後へわたる風には
 いつでも素顔を
 そよがせて




やがては滅ぶたいようの
かなしみはまだ、聞こえない



いたずらじみた眼差しで
数えてよろこぶ
くちづけに

ふたり、
つがいの色になる





   グループ"【きみによむ物語】"
   Point(24)