ヘルメスの月/
朱雀
音もなく
無窮の果ては闇に落ち
虚空の下で
貪婪(どんらん)な渇きは癒えず
玲瓏たる
銀の雫に月は盈ち
秤の上で
静謐な焔(ほむら)を煽る
魂(たま)が振れ
産霊(むすひ)は解(ほど)け 月を欠き
器を返し
潺湲(せんかん)と滴る水銀
海(あま)は凪ぎ
底方(そこい)に宿るあらたまは
昇華を成して
悠然と朱に染め上がる
――瓏銀の水面(みなも)に惑うエトランゼ
バーミリオンの月はかくれて――
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