恋時雨/なかがわひろか
恋時雨
闇夜に浮きし
碧き月かな
不義理なお人ね
言うだけ言って
後はお忘れになるんですもの
本当は全て覚えているくせに
なんて
けったいな方でしょう
貴女の声に乗せられて
彼方の月が
踊りだす
お口が達者なお方ね
でも分かっていても
私の心の臓物は
嬉々としてしまうのです
呪文のようなか細いお声
世の女を嫉妬させる
殿方が狂うのも無理ないわ
あらあら、もうこんな時間
東の空が明らんで
月夜の色も薄らむわ
そろそろお帰りになりましょう
あなたの惑いは
また今夜にでも
恋残り
再び会いする
碧き月かな
(「恋時雨」)
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