怪し、夢と思ふ/なかがわひろか
一寸の間に見た
夢のお話
赤いメダカが
五臓六腑を泳ぐ
ストレエトな
羊の巻き毛に
乾いたペンキが
真っ白に染まる
嗚呼厭ァ
声をかける人は
皆明るい影を持つ
踏めば痛ひ痛ひと言ふ
嘘つきと言ふ
冗談はお止しよ
真に受けず聞いておくれよ
即ち其れは前戯の妖かし
をかし趣所以曙
いと可笑しいなあな楽しや
心を喰らって腹を空かせよ
お前と言ふな
気易く呼ぶな
一寸の夢のお話
ゆめゆめお気になさらぬ様
(「怪し、夢と思ふ」)
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