The grasshoppers in the rain/佐々宝砂
 
ぼくの名前はシニ、
でも名前なんてそんなに重要なことじゃない。

その日は朝からひどい土砂降りで、
ときどき雷も鳴っていたから、
サニはとびっきり不機嫌だった。
こんな悪い日にはきっと、
金髪のミアは寝たきりで目を覚まさない。
それでもぼくたちは薬草を摘んで出かけた、
ノックすると粗末なドアが開いて、
赤毛のアミがいきなり「ありがとう」と言った。

いつものように薬草のお礼は果物。
今日は溶けそうにやわらかないちじく。

談笑するふたりを残してぼくはひとり抜け出す、
掴みとったいちじくの皮が破れてぼくの手を汚す、
アミ、このいちじくはあんまりかよわいよ、
あんま
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