四行連詩 独吟 <都市>の巻/塔野夏子
モザイク都市が踊っている
街路を 広場を 時計塔を弾ませながら
踊っている 時々色とりどりの欠片が
飛び散るけれど 気にもとめず 踊っている
*
久しぶりに晴れた空に
澄んだ鐘の音が響きわたる
きらめく夏の欠片を胸に
冬のさなかを歩いてゆく
*
白い砂漠の夜を 一頭の銀のライオンが
しずかに歩みを進める やがてひときわ高い砂丘の上で
おもむろに立ちどまり きらめく星々を見あげ
うたうようにしばし吼える そしてまた歩きだす
*
歌が 散歩している
あかるい午後の並木道を
誰かとすれちがうたび 少しずつ
リズムとメロディーを 変えながら
*
薄緑の空と水
灰色の桟橋
誰もいない
白い帽子の幻がよぎるだけ
*
白い雨が去り
人々はゆっくりと視線を上げる
漂う青い都市の上に
硝子の虹が架かる
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