声帯/伊月りさ
顕現に必要なものを
まさぐる闇雲に
吸収をする短調や
ビブラートに憧れている
視線はぐらついていて
四方八方
飛び出した繊維が晴天を這う
わたしはこんなにも空間に
蔓延るのに
塗りつぶせないのは
この指先に声帯がないからだ
と、気づいたわたしは
奏でられない言語を散財させているが
報酬に指標などない
音量をあげるつまみが
あるだろうか、
ここには
反響がないので
きっと期待は裏切られる
頭を
抱える
頭に充溢している言語を
ふるわせたい、
わたしにあの
声帯をください、強靭な
絶対の筋肉
あらゆる額縁を割る
絶対の声は
必死の独唱をきみに
惨めな独唱をきみに
絡ませる
声帯をください
(創書日和「声」)
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