創書日和【声】 声が聞こえる/大村 浩一
廃村の外れで
垂れ下がった電線が風に吹かれている。
壁や窓を叩いている。
置き去られたカラーボックスに
アニメのシールがでたらめに貼りつけてある。
清掃車のオルゴールが近づいてくる。
博物館のケースの中に
酸化していく手紙がある。
万年筆の青い文字が踊っている。
深夜の池袋の高層ビル
灯りの消えた水槽が淀んでいる。
「便水願います。」
充電器をなくしました。
ありきたりを呑み込んで
画面は真っ暗。
2008/10/28
大村浩一
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