小さな翼/よしおかさくら
 
何かが転がっていた
転がってきた
柔らかい何かを踏んだ
羽だらけの塊
小さな翼なのだった
踏んだのか
踏んだのか
振り返り見て見ないようにする
人通りの多い階段脇
誰も
立ち止まらない誰も

帰る道すがら考える
交通量が多いから
まだ飛べない子供
車にはねられて弾んで
歩道まで蹴られて
蹴られて踏まれて

私も踏んだ

私も踏んだ
柔らかかった

次の日も見かける
次の日も
次の日も
転がっている

空を飛ぶはずの翼
を踏み
命だったものを蹴り
葬ることを知らない


   グループ"創書日和、過去。"
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