創書日和【器】SHIP/大村 浩一
 
この碗はわたし
ひんやりとした手触り
入っていたのはひと綴りのことば
自分に深い意味はない
ここまで来て
この次に至る中継点であっただけ
どうなるか分からない はいいろの海に
漕ぎ出し辿り着いた一隻


幸いだった
ことば無く消え失せたのではなくて
そのひと綴りの限り無い組成の
一語たりとも同じなら
それはわたし


わたしはひと綴りのことばの器
それを受けて携え
あるいは一語足して次の誰かに渡す
うまく伝わればいい
託すものはそれだけ
絶えるなら絶えろ
違う誰かが生きる
(それもわたしの遠い一部)


わたしはわたしのぶんの重さの骨灰になり
わたしの碗に収まる
わたしの運んだ文字列を
まるい空虚に記憶して


2008/5/31
   グループ"創書日和、過去。"
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