創書日和「扉」/虹村 凌
灰色と銀色に染まった街を歩いて抜けて
折れ曲がった煙草に火をつける
築20年のアパートまでもう少し
汚れて薄く汚れた黒いジャケットが
雨に濡れて真っ黒に染められていく
傘は嫌いだから持たない
手を塞ぐのは煙草だけで十分だから
子供の頃に書いた作文みたいな
そんな夢を忘れてしまった
もうスニーカーも履かなくなって
下駄箱の奥で埃を被っている
濡れ鼠はドブネズミと違うから
そんなに美しくなれなかった
扉の手前で何本目かの煙草を消した
今日も返事が無い
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