残酷!怪人スミレ女(愛と哀しみのMr. チャボ)/角田寿星
 
の差し入れ
弁当をつくってもらった時は感激した
メザシをめぐる 小谷少年との壮絶な一騎打ち
スミレの部屋でふたり ソーメンをすすった

「食べ物の思い出ばっかりだなあ」
「だってチャボさん いつもお腹すかしてたから」
「泣いて歓んでたっけ 俺」

ふたりは 仔犬のように
黄色がかった芝生を走り回らなかった
林のどんぐりを拾い集めなかった
裸足になって足を池にひたしたり
寝っ転がって空をながめたりしなかった
ふたりは歩いた
さほど広くない公園のおなじ道を
ぐるぐるぐる 何回も 何回も 何回も

そしてこれからのことは 一言も語り合わなかった

ふたりは歩いた
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