幸せと出会う丘で/恋月 ぴの
 

おばあちゃんが受け取ったのは
おじいちゃんが沖縄で戦死したとの便り
でも おばあちゃんは話してくれた
気が小さいおじいちゃんのことだから
恐ろしい戦争は終わった今でも
カメヌクーのなかでひとり隠れているよ
誰も怒ったりしないから早く出てくれば良いのにねえ
今日もあの日のように暑くて
夏空に真っ白な雲が幾つも浮んでいて
「好きな人できたんだよ」
両親と喧嘩して家を出て行くときも
心配そうに駅まで見送ってくれて
いつまでもホームで手を振ってくれた
とっても優しかったおばあちゃん
「もしかしたら結婚するかも」
まわりを綺麗に掃き清め
お花を供えれば薫る線香のかおり
お墓に水をかけて
そっと ふたりに手を合わす
おじいちゃんを待っていたおばあちゃん
でも ずっと待っていたのは
おじいちゃんのほうだったのかな
天国で仲良く暮らしているんだよね
いつのまにか感じはじめる夕暮れの気配が
ふたり一緒のお墓を優しく抱きしめて
手桶かたかた猫にも挨拶


   グループ"わたしたちの8月15日"
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