手紙/石瀬琳々
 
まっさらな春の手紙を開封す花びらこぼれていちめんの花


雨のように心は君をおぼえてるインクのにじみ幾度もなぞり


桜闇何を待ちわびあの日からかごめかごめの輪のなかにいる


雨でした、泣き濡れたまま奪ってよくちびる触れたその場所へ君


恋しいと空行く風にしたためる若葉揺すれて青い切手を


さよならの五月のかもめ便箋の白い海には愛するの文字


わが小鳥血を流し鳴く赤色(せきしょく)の薔薇よ答えはどこにもなくても


はつ夏の森をひらいて雫するみどりの馬のギャロップかるく


(元気です)思いひとつを投函すいつかは胸に届いて風よ






   グループ"薊道"
   Point(7)