小詩集【かなしみ】/千波 一也
 




一 まざり、あう



かぜをすする、と
むねは
しずかさを
とりもどす

むかしむかし
おそらくぼくは
みずうみだったのだろう
かわではなく
うみでもなく

つきの
みちかけと
おしゃべりしながら
かぜのゆくえを
みていた、
のだろう


かぎがひかる、と
むねは
おそれて
さわぎだす

それゆえぼくは
こわくない、
こわくない、

なみだのなかの
てつに
なる


 あしたもかならず
 あめだろう

 いともたやすく
 よろこびに
 しずんでゆくのを
 こばむため

[次のページ]
   グループ"【こころみ詩集】"
   Point(4)