小詩集【寄る辺なき歌】/千波 一也
 
とがない
それだから何となく
そよかぜのうそが
小気味よい

洗いたての毛並みには
ほどよいかぜが
必要なので
ちょうど
うそと
うそとが
折り合いよくて

岸辺がいつも
すがすがしいのは
刃物のような
恐怖の
ひとつ

それゆえ時は
咆哮をする

けものの演技を
足元から
さらうようにして
さらう気もないくせに
懐かしそうな
顔をする













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