ハンカチ王子はお好き?/恋月 ぴの
 
額の汗を無造作に拭うあいつより
きれいに畳んだハンカチで汗を拭う
そんな男のひとに憧れてしまう
えっと…そんなひとなら
細い指先に挟んだボールペンを
くるくる器用に回したりして
わたしのこころを鷲掴み
(想像しただけで感じちゃう
でも 鷲掴みされたわたしのこころは
わたしのこころでは無くなりそうで
そんな自分がとても恐くて
きっと誰かと話している姿に
指をくわえてため息ひとつ
(こんなわたしだって…
でも…たぶんそうなんだよね
こころを通い合えるひとがいて
安心できるひとときがあるからこその
浮気ごころってもんだよね
ぱたぱた歩道を歩いていると
(このミュールも今年で終わりかな
厚かましく居すわる夏の日差しに
かげろう歩道橋の上から
誰かが大きく手を振っている
なんだあ あいつかあ
相変わらずやせ我慢のネクタイしめて
全身汗びっしょりになって
(ハンカチ持たなきゃ王子じゃないぞ
ばっかみたいに
ひとの名前を気安く呼ぶな


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