トリプトファンレス・トリプル2/佐々宝砂
あったのではない
(そりゃもちろん穴はあるがその穴ではない)
あなたのご想像と違って
身体に穴があったのではない
(そりゃもちろん穴はあるがその穴ではない)
両親のせいにしなくてはならないほど古い穴ではなかった
(私はアダルト・チルドレンではない)
まだ新鮮な血を吹き出すような新しい穴ではなかった
(私はそんなに若くない)
それは深いにしろごく小さな穴で
放っておくこともできたが
どうしても埋めることができない
埋めることだけはどうしてもできない
で
かなしくなって大酒呑んで
(これら事件の遠因であるその穴を開けた犯人はとうとうこの詩に出てこないまま)
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