森の背中/佐々宝砂
 
たのか
あたしが何をほしかったのか
いまこそあたしは知っている

土手沿いには三日月沼がひとつあって
葦がたくさん生えていて
四畳半くらいの広さしかない水面は
澱んで泡を浮かべている

沼の暗い水に浮かんでいるのは
泡だけではない

うつぶせになってたらりと手足を沼に沈めて
浮かんでいるのは森
顔なんか見えないし
この体勢ではセックスなんかできないけれど
そんなことはどうでもいい

これがあたしのほしかったもの

白くふやけた
あたしがころした
森の背中に

冷たく固い
moriの背中に

あたしはゆっくりと
自分の肌をかさねてゆく

   グループ"Strange Lovers"
   Point(5)