トリプトファンレス・トリプル/佐々宝砂
実区別がつかない寝ぼけた顔を洗って髪を結い
昨夜から作っておいた煮えすぎの味噌汁を食い
買ったときには白かったシャツを着て仕事に出かけ
などという日常を書いていいのだろうかと
平凡な問いが大脳皮質表面をりらりらまわるそれが今で
でもあのとき 時がのんべんだらりと続いたあのとき
夕方だか夜明けだかわからなかったあのとき
ゼリーのカップで生ぬるいチューハイを飲みながら裸で
触ると崩れる危なっかしい本の山のあいまで
俺が一人ではなく二人でもなくでも俺たちだったとき
俺は確かにあのときあそこにいたけれど
白紙の上に俺がいると思うか思うなら立ち去ってくれ
キリンのあごひげに俺
[次のページ]
前 次 グループ"Strange Lovers"
編 削 Point(10)