女王は生き血の風呂から手を伸ばし/佐々宝砂
 
こもうとする

君はその手を払いのけて
いつか見た清浄な海を
しくしく痛む胃壁に描いてみている

なまぬるい鉄の風が吹き抜けてゆく


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君は女王に告げられずにいる

あなたは明日から
二度と太陽を見られないのだと
窓がない部屋の石造りの壁龕に
あなたは生きながら塗り込められるのだと

君は斧の汚れをおざなりに洗い流す

凝固し始めている血液のあいまから
女王の乳首が見え隠れする

女王へのせめてものはなむけに
君は大きな姿見を急いで用意しておくべきだ

君は明日にも処刑されるのだから

そしてそのとき君は
むしろ晴れやかな気分になって
幽閉された女王が垂れ流すであろう
糞尿の臭いを想像するのだ

   グループ"Strange Lovers"
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