女王の片恋に関する11のソネット/佐々宝砂
その1
熱帯雨林。カヤワラ鳥の鳴く声。
煮詰められた毒素の甘い匂い。
腰蓑の女王のはだかの胸、
重たげに吊り下げられたガラスと金属。
きみが持っていた聖書は
火に投じられた。
きみは色白だが
それはどうしても女王のお気に召さない。
ぐらぐらと沸騰する大鍋のなかで
きみはとろけてゆく。
あとに残るのは脂と骨と、
ゆがんだ眼鏡。
女王はそら涙を流して、
まだ熱いその金属にくちづける。
その2
きみは美神に祈りを捧げる。
悪臭漂う牢獄は暗黒だが、
きみはきみの境遇ゆえに
祈るのではない。
いましめられたきみは
ヨカナーンではないし
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