夫婦箸/恋月 ぴの
あなたとおそろの夫婦箸
いまはもう使う気にもなれない
あの頃は愛の姿を信じていた
同じ季節の同じ日々
それでも、素肌に感じる感触は
あの頃とは確かに違っていて
ひとり台所に立てば
化学の実験の真似事でもしてみる
白砂糖を真水に溶かし
ゆっくり煮詰めると
透き通る黄金色の液体になる
それを紅葉柄の夫婦箸に絡めて
掬い上げれば
あなたの軽い冗談を真に受け
何処までもついて行こうとした
あの頃を思い出してしまう
あなたの冗談を
わたしの涙で溶かし
ゆっくり煮詰めても
こんな色合いになったのかな
世間体という型に流し込み
夫婦箸が似合うふたりだったのに
待ちきれない
じれったさのなかで
終わりの終わりに気付いたら
紅葉吹雪は秋の気紛れ
あなたはいない
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