夕焼けのポケットさん/AB(なかほど)
まだ公園も整備されてなくて
材木置き場で資材主の目を盗んで遊んでた頃
もうお家へ帰ろうかという時間に
畑から帰る吉じいは子供達を集め
動物の真似をさせては
これは猿の薬、これは犬の薬、これは猫の薬と
ズボンの右のふくらんだポケットから
アメリカ色のミルクキャンディーをくれた
そういえば左のポケットもふくらんでいたけれど
僕らは右のポケットしか見ていなかった
それから
吉じいの引く水牛の姿もなくなって
街の予備校へ通ったり
基地の中や夜の街や内地で働いたり
それでもたぶんみんな
吉じいのくれたミルクキャンディーを忘れてないよ
僕らは僕らなりに
左右
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