思い出『金木犀』/LEO
 
一瞬で
それと分かる匂いは
金木犀


 幼き頃の庭遊び
 細かな花びら
 摘み取って
 硝子の瓶に蓋をした
 秋の陽だまりにも似た
 満ち足りた表情で

 その濃い芳香さえも
 特別なものとして
 一緒に詰めたのは
 声にしない
 言葉だったかしら
 流さない
 涙だったかしら

 硝子の瓶は
 幼き心さえも
 閉じ込めて
 秋の日が
 金色に染まる――


あの時の
あの感情も
あの表情も
瓶に詰めたまま
忘れたのでしょう

思い出は
遥か遠く

幼き心は
色褪せて

金木犀の匂いが
時折、それを
思い出させるけれど


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