春夜彷徨/塔野夏子
 
桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地

    息づく闇の何処かで
    黒髪の 解かれる気配

ほのかに 立ちまようのは
知らない花の香と
やわらかな水の 触れあう音色と

ほのかに うかびあがるのは
うち捨てられた廃墟か
はたまた 墓標の群れか

    ああこのたえまないあたたかい憂いが
    わたしをとめどなく さまよわせゆく

桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地

    息づく闇の何処かで
    白い爪先の ゆらめく気配



  グループ"春のオブジェ"
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