灰の月/塔野夏子
 
窓辺を漂っていたスウィートピーたちは
薄れて消えてしまったよ
白いのもピンクのも薄紫のも
いつか行こうなんて云っていた
銀の門のある空中果樹園も
いつのまにかどこへやら消え失せてしまったよ
今宵の空に架かっているのは灰の月で
やっぱりきっと夜明けには
吹きさらわれて消えてしまうよ

仕方ないからテーブルに白い大きな紙をひろげて
消えてしまったものたちの絵をひとつひとつ
たいせつに描き込んでるんだ
不器用だからどうしても
絵の具はにじみがちになるけれど
忘れてしまわないうちに

君を待つって
そういうことなんだね
もうすぐこの白い紙は
いっぱいになるよ




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