菫と百葉箱/
塔野夏子
いちばん旧い校舎の
さらにその裏
もう誰も見に行くこともない百葉箱
そのそばに菫が咲いている と
君が云ったのが
はじまりだった
ふたりはそれからそこで
いくつかの秘密をかさねた
ためらいとはじらいとが
甘やかに漣(さざなみ)して――
その夢中の日々は あえかに短く
卒業と共に
終わりを迎えた
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